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2006年08月31日

ニュースメモ(2006/08/27-2006/09/02)

News

【2006/08/31】
[society] 「再チャレンジ」できる社会
雇用する側の選択原理が一番大きい気はしますけどね。

[society] フラット型家族の特徴(2)「ワークライフ・バランス」を実践
父親の希望とは別に、父親の存在より給料が増える方がいい、という家庭側の事情もあったりするような気もするのですがその辺の割合はどうなんでしょうね(偉い人はホワイトカラー・エグゼンプションで残業代を圧縮して労働時間を延ばしたいのに、労度時間を短縮してかつ給料は据え置きってのは難しいでしょうから)。

[society] 雇用形態
同一価値労働・同一賃金活動の原則が守られればそうかも。

[society] 社会保険庁が保険料を徴収したくない真の理由
どんな組織でもそうですが、誤ったKPIを設定してしまうと、そこに過剰適応してしまうため、いかに目的に繋がるKPIを設定できるかが重要。

[business] iPodが露わにした、グローバル時代の労働問題
グローバルにサプライチェーンが繋がってくると、繋がった先の国の中のチェックも必要になってくるということ。

[education] 公立小中校長の9割「学力格差、将来広がる」
モジュール化する社会」な話ですが、共働きによって親が家にいられない中で、しつけを含めた家庭教育がアウトソースされている、ということだと考えます。もちろん、今の学校はそうした新たな役割に対応しきれるほど余力はないのですが。

[education] 全公立小で“放課後教室”…共働きには時間延長も
これは、ボランティアが既存の仕事を破壊するモデルではなさそうなのでいいんじゃないでしょうか。ただ、何か事件が起こると大変なことになりそうですが。

[misc] 本当にロシアはシャラポアみたいな美女であふれているのか?考
シャラポアクラスがゴロゴロ! てか東洋人とは造形が違いますよねぇ。

【2006/08/30】
先日は「インゴ・マウラー展」を観てきました。電球に羽がついてるヤツ(Lucellino)とかいいんですけど、さすがに結構値が張りますね。

[society] 残業代なしでただ働きを強制される時代の到来~ ホワイトカラー・エグゼンプションって何? ~
今更ですが、モリタクによるホワイトカラー・エグゼンプションについて。もっとも、伝統的な日本企業は除いてすでに年収1000万前後では年収ベースや裁量労働になってる気がするんですけどね。400万は確かにどうかという気も。恐らく、これまで夫800万円+妻100万円(パート)だったものを、夫400万円+妻400万円でやって欲しいということなんだと思います。

[society] 降りられない現実
想像力の及ぶ範囲。「降りる自由」はすでに相当の自由な選択肢がなければ言えない。

[business] 病床にて『サービスの本質とその向上策』について再考してみた
例のホスピタリティというヤツ。これが誰でもできることじゃないんですよね。

[work] 自分が主人公の生き方~ 自分の人生のハンドルは自分が握る ~
自分が主人公となって働くための心構え。「日々ルーチンな仕事に追われている人は、ルーチンな仕事の処理に埋没して長期的な展望とか革新的な解決策とかを考えなくなってしまう」も合わせて考えると良いかも。

[education] 小学校・中学校・高等学校のそれぞれの学校段階に関するこれまでの主な議論(案)
コミュニケーション能力や対人能力の育成がちゃんと含まれてます。

[education] 経済教育に関する研究調査報告書
こちらは経済教育ですか。学校教育で必要では? と以前挙げていたコミュニケーションとカネの2つについて、さすがに偉い人たちも考えているようです(もちろんそうそうワークするとは思えませんが)。キャッシュフロー 101とかどうでしょう。額に汗して働くワーカーが作れないから偉い人は不満かな。

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2006年08月26日

ニュースメモ(2006/08/20-2006/08/26)

News

【2006/08/26】
[society] 格差社会と男性の疎外感(via 観察者日記:after school and DENJIHA)
非常に単純化して言えば、生産者としては、サービス(産業)化によって筋力・体力に優位性がある男性よりも、感情面に優位性がある女性が有利になったということ、消費者としては、マーケティングが効きやすく実質的に財布を握っている女性を優先的に対象とされやすいことが挙げられます。
関連: [society] 産業・就業構造の10年予測~少子高齢化、グローバル化で医療・福祉、情報通信、加工組立型製造業が牽引~ (pdf)

[society] 6割強が「労働力不足」に陥ると予測
実際はある種の「ミスマッチ」なのだとは思いますが。
関連: [society] 「35歳以下の正社員不足」企業8割近くに・経団連調査

[society] グループ派遣
偽装請負対策な感もありますが…。
関連: [society] 暗黒時代に突入

[society] ニュータイプの日本の雇用システム ―長期雇用と成果主義―
長期雇用+成果主義の「New J 型」が主流に。

[society] はてなブックマーク > ニートに「発達障害」の疑い、支援に心理専門職も : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
凄い食いつき。色んな原因があるのに、一緒くたに見えてしまうところがこのタイトルのマズいところ。

[communication] メガネブームの背景にある価格破壊とデザイン性の向上 (pdf)
ブーム、なんですか。

[communication] 女性誌は「愛される」の時代へ突入か? どうなる「モテ」
小天使!

【2006/08/23】
[society] 高齢者世帯の多様さと統計上の所得格差
変化がないということではなく、複数の要因が関係。

[society] いずれ日本社会に外国人労働者層ができるのでしょうね
すでに弁当屋とかでは主力になってますよね。

[society] はてなブックマーク & kmizusawaの日記 - 昼間働いている人の雑用問題
消費者天国のカラクリ」に繋がる話。サービス提供側の生活をイメージすることはなかなか難しい。

[communication] いじり
あー。

[communication] 睡眠・食事・身の回りの用事の生活時間
睡眠時間の減少がお洒落の時間に移っている?
関連: [communication] 都道府県別の女性おしゃれ努力度

[partner style] 自信持てない男増えた? 米で女性の口説き方講座盛況
どの国でも。

【2006/08/20】
ジャナイナ・チェッペ展に出かけてきましたが、サムネイルになってるのを含めていくつかの作品が凄い良かったです。
参考: [misc] ジャナイナ・チェッペ展@渋谷 ウェブギャラリーの存在価値とは?
(買うのが目的じゃない人は複雑な気分な気もしますが…。)

[society] 米国の拡大する所得格差と政党選択のねじれ現象~所得格差の拡大はなぜ民主党への支持を増やさないのか?~ (pdf)
何か、どこかで見た構図のような。

[society] 偽装請負合法化の先にある日本的経営は誰を幸せにするのか?
法(ルール)を変える影響力を持っている人は現状維持が都合が良いのが通常ですから、法(ルール)が現状を追認する方向で変化していくのはいつものことです。

[education] キッザニア
これ面白そう。要は子ども向けのお仕事体験テーマパーク。社会の縮図な訳ですが、ただアングラなお仕事はなし(そりゃそうだ)。

[education] 「子どもの学力状況」に関する調査結果 ~子どもの学力低下要因は、ゆとり教育導入による影響との指摘が約7割~
大学は「社会性」(社会のルール+コミュニケーション力)形成の場。

[partner style] はてなブックマーク > asahi.com : 結婚しない男、理由は「相手」「経済力」に恵まれず - 暮らし
アンケート項目として用意されていないだけで、特に男性の場合は「できなかった」の割合がある部分を占めてそう。

[communication] 純非モテとエセ非モテ
そのために「非コミュ」という言葉があるんですが、「非コミュ」は「非モテ」に内包されてる(下図)訳ですから「エセ非モテ」は凄い違和感ありますけど。「エセ」というと通常外側を指すのでは。

非モテと非コミュ

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2006年08月24日

格差意識格差

Society

総中流意識が崩壊し、「希望格差」といった言葉が話題に上った2005年を格差元年とすれば、2006年も後半を迎えて、一段と様々な方面で格差論議がかまびすかしい。原油価格の高騰や米国経済の減速といった不安要素を抱えつつも、いざなぎ景気超えが確実視されるなど、景気の緩やかな改善が進む中で、そうした景気回復の恩恵に預かれる人と、景気回復どころかますます生活が苦しくなるばかりで、何一つ景気回復を実感できていない人が出てきたり、好景気と団塊世代の引退を控えて新卒の採用が急速に売り手市場になる中でも、固定費が増えるのには慎重で要求水準が厳しいままであるため、内定をいくつも取れる人と、まったく取れない人が生まれたりしている。

実際、もともと格差が比較的大きい高年齢層の割合が増えていることを割り引いても、若年層を中心にフローとしての収入格差やそれ以上にストックとしての資産格差といった経済格差が広がりつつあることが複数のレポートで指摘されているし、仕事・雇用・収入における地域・企業規模・性別などによる様々な格差や、恋愛や結婚といったパートナにおける格差など、多くの人にとって重視される様々な要素において格差の拡大が観察されている。

しかし、生の充実という視点で見ると、格差について考えたり声を上げたりする必要がない人と、考えたり声を上げざるを得ない人の格差、つまり「格差意識格差」こそが実は重要なのではないだろうか。

そして、この格差意識は実際の格差とは必ずしも関係ない。ワーキングプアとか、年収150万時代といわれる、生活するだけでも厳しい人が経済的な格差に意識的になるのは無理もないが、以前、「格差ゲーム」の記事で、「中の上」の人たちが格差意識を隠さなくなってきたということを紹介したように、全体から見れば比較的豊かな方に入る人がむしろ格差意識をむき出しにし始めているのである。「LEON」のようなやや高めの商品を扱うファッション誌とか、「プレジデントFamily」のような子どもへの教育を中心に不安感を煽る雑誌が出てきたことは、そういった差別化へのニーズの高まりを示しているとも言える。インターネットが普及して情報の共有が進み、他人との差を容易に比較しやすくなったこともまた、格差意識をより醸成しやすい状況を生み出している。

もちろん、社会に存在する様々な格差から課題を引き出し、解決策を検討し、それを政策提言に繋げていくような研究者や、実際に政策を実現していく政治家、官僚はそれこそが仕事(の一環)であるので意義のあることである。しかし、一般の人にとっては、格差の議論はただの飲み屋の愚痴や優越感競争にしかなりにくい。確かにストレス発散やガス抜きには効果があるだろうが、実際の格差の解消には何ら繋がることはほとんど期待できないのである。

これは日本よりも1人当たりGNPの小さい発展途上国の貧しい人々の方が、上手く言語化できない閉塞感を抱き、疲れた表情をしている日本に住む人たちよりも生き生きとした表情をしているといった指摘に繋がる話である。豊かな国を目指して努力を続けてきた日本は何故か、大切な家族とただ普通に生きることが余りにも難しくなってしまった。

他人と比較することでしか、満足感や幸福を見いだしにくくなっており、必ずしも必要ではないモノやサービスの過剰消費に依存し、恐らくはその結果として、心の底では余りやりたくないことに大半の時間を割かなければならなくなっているのだとしたら、それはストレスが溜まるばかりで余り楽しそうではない。自分を変えること、親しい人のためにすること、心から楽しいと思えることに時間とカネを注ぎ、必要以上に格差に振り回されたり、格差意識をこじらせないことこそが、「格差意識格差」に落ち込まないために大切なことではないか。

いや、そういうsocioarc自身が一番とらわれているとも言えるのだけれど。

【関連url】
[society] 幸福の生産性 (pdf)
[society] 幸福度の国際比較(世界価値観調査)

【関連書籍】



4166605224論争 格差社会
文春新書編集部
文藝春秋 2006-08

by G-Tools
4130511246変化する社会の不平等―少子高齢化にひそむ格差
白波瀬 佐和子
東京大学出版会 2006-02

by G-Tools
4047100439こころの格差社会―ぬけがけと嫉妬の現代日本人
海原 純子
角川書店 2006-06

by G-Tools
4163681507大卒無業―就職の壁を突破する本
矢下 茂雄
文藝春秋 2006-05

by G-Tools

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2006年08月23日

サイト名を変更しました

Misc

sociologicが一般単語だったのが気になっていたため突然ですがサイト名を変更させて頂きました。socio+architectureの略です。扱うテーマについては変更はありません。

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2006年08月19日

ニュースメモ(2006/08/13-2006/08/19)

News

【2006/08/19】
先日は蒼井優のはぐ目的で「ハチミツとクローバー」を観てきましたが、凄い微妙感が…原作は男性陣がかっこ良過ぎるの対して映画では全然かっこ良くないので(容姿ということだけでなく)。

あとおもむろにMovable Typeをを2.6から3.3に上げたので若干変わっている部分があるかもしれませんが、もし何かおかしいところがありましたらご指摘ください。

[society] 組織・制度への信頼度の推移
自衛隊への信頼度の上昇と労働組合に対する信頼度の低下。この辺は「信頼」というより「期待」というような気も。いざとなれば自衛隊だけでどうこうできるものでもないですし。

[society] 児童労働-ジーザス! 俺たちの仕事が減っていく-
若者と中高年が競合する構図。雇用する側から見れば、より多い候補者から上澄みを掬えるのがベターな訳で。更には外国人が加わっていくことになります。

[communication] 究極のコミュニケーション能力とは
介護の場面での非言語コミュニケーション。読み取れ過ぎるのも疲れそうですが。

[partner style] はてなブックマーク - 35歳で結婚は絶望的となる : Simple-憂鬱なプログラマによるオブジェクト指向日記
希望と現実は違う、と。ま、社会的圧力の低下によって希望を捨てきれない人が増えたということがいわゆる「ミスマッチ」ということでしょうけど。

【2006/08/17】
[society] 専業主婦、1日の昼食代の平均は半数以上が「300円未満」。へそくり額については、「300万円以上」が8%も!?
自炊は安く済みますね。

[economy] 2006・2007年度日本経済見通し~戦後最長の景気回復の実現により視野に入ってくる完全雇用~ (pdf)
いざなぎ景気超えにより2007年下期には完全雇用も。
関連: [economy] 2006・07年度内外経済見通し (pdf)

[economy] 結婚と離婚と株式市場 結婚/離婚レシオは株価に先行
一見風が吹けばっぽいですが。

[business] 高齢者の意欲と生産性を高める職場とは〜先進企業の取り組み状況と日本企業の課題〜 (pdf)
能力に依らず希望者全員を雇用する必要が出てきたため、意欲と生産性を高めることが課題に。

[partner style] はてなブックマーク > 男が簡単に恋をあきらめる理由 - [男と女の恋愛学]All About
あくまで女性へのアドバイスという形ですから女性にとってターゲットとならない男性については言及はされません。

【2006/08/14】
[society] 『希望学』が明かす時代の閉塞感 (pdf)
希望の修正プロセスなど、希望学の1年を振り返る感じで。

[society] はてなブックマーク > livedoor ニュース - 年収150万円時代に突入
学生だったらまぁ十分なんですが、家庭を持つのは厳しいラインかと。

[business] 「人材マネジメントに関する研究会」報告書の取りまとめについて
90年代以降の人材マネジメント(特に成果主義と労働力の変動費化)がもたらした課題を踏まえた新しい方向性のまとめ。
関連: [society] 偽装請負と日本的雇用慣行 / 「偽装請負と日本的雇用慣行」に係る追記
関連: [society] 非正規雇用(偽装請負)問題について:確実なるデフレと日本的雇用慣行 / 続・非正規雇用(偽装請負)問題について:「ワーキングプア」と総需要

[business] Works 人材マネジメント調査 2005~2015年。人材マネジメントはどこへ行く?~
5年後、10年後の人材マネジメントについて。

[partner style] 普通に平和な結婚生活をおくっているだけでも成功
これはそうでしょうね、本当に。
関連: [society] 少子化を考える。
関連: [society] じぇんだーふりーな気持ち/メモ

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2006年08月12日

ニュースメモ(2006/08/06-2006/08/12)

News

【2006/08/12】
[society] 働く人の心を守れ
メンタルヘルス特集。企業事例の半分以上が(レガシー)IT業界なのは。

[society] 年齢別フリーター数・ニート数の推移
後期若年層の割合が増加。
関連: [society] 日本経済 ~「失われた世代」~ (pdf)

[society] 人口減少時代の社会保障改革
ゼロサムゲームとしての社会保障。

[society] 医師不足と「喪の作業」
医師の地域・科による偏在の問題と「死を受け入れる」ことについて。どの業界でもそうですが、なりたい人が少ない→人不足で労働環境が更に過酷になるという悪循環をどうしたら打破できるかというのが最大の課題。
関連: [society] お産難民
参考: [society] IT人材不足を解消するためにすべきことは何か

[marketing] 団塊世代の大事にしたい時間、男性「夫婦で過ごす」 女性「旅行・レジャー」~プレ団塊、団塊世代のインターネットユーザー1000 人の回答結果~ (pdf)
旅行のニーズが高い。

【2006/08/10】
[society] 男女共同参画社会(の真の狙い)
「男女の労働者に、現在の男性なみの厳しい労働条件で、かつ、現在の女性なみの安い賃金水準で働いてもらうことで男女間の格差を解消したい」という真の狙い。経済的な事情が「男女共同参画」を進めたという話と繋がる。

[society] 霞が関の平均残業時間は約40時間/月?
「残常自慢」は意味ないですが、国家公務員は確かに忙しそう。効率上おいしいのは地方公務員か。

[society] 都道府県別の生活時間の配分
地域による違い。

[society] 母親に聞いた子どものポケット実態調査 (pdf)
少子化時代の子ども向けビジネスとして「6ポケット」「8ポケット」「10ポケット」などと言われますが、じゃあ実際はいくつあるの、という調査。

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2006年08月08日

モジュール化する社会

Communication | Society

以前、「サービス化する社会」では、サービス産業の占める割合などから社会のサービス(もちろん「無償の」という意味ではなく)化について書いたが、表側でサービス化が進んでいる裏側では、「モジュール化」が進んでいるということでもある。「モジュール化」とは「モジュール化 新しい産業アーキテクチャの本質」によれば、

「モジュール」とは、半自立的なサブシステムであって、他の同様なサブシステムと一定のルールに基づいて互いに連結することにより、より複雑なシステムまたはプロセスを構成するものである。そして、一つの複雑なシステムまたはプロセスを一定の連結ルールに基づいて、独立に設計されうる半自立的なサブシステムに分解することを「モジュール化」、ある(連結)ルールの下で独立に設計されうるサブシステム(モジュール)を統合して、複雑なシステムまたはプロセスを構成することを「モジュラリティ」という。(p.5)

ということである。日本企業では比較的インテグラルな方に強みがあり、それほどグローバルレベルでの産業の「モジュール化」は進んでいないが、それを支えているのは社員の非正規化や偽装請負の活用という形での労働力のオンデマンド化によるコスト削減であり、ある意味で労働力の「モジュール化」とも言えるものである。

今回は、製品や企業のビジネス機能の「モジュール化」ではなく社会機能の「モジュール化」について考えてみたい。日本の企業で「モジュール化」への慎重な対応が行われているのとは対照的に、社会機能の「モジュール化」は急速に進んでいる。例えば、教育や医療は従来から専門家に委託してきた訳が、近年、家事・育児・介護といったものについても家庭から分割、外部化されシェアドサービスとして利用する方向にある(*1)。本来家庭で行うものであったしつけの外部化が進んでおり、学校に過大な負担がかかっていることも問題視されている。

(*1)ただし社会保障費の削減を意図して福祉機能などを家庭に戻そうという動きもあり、政府の期待と個人のニーズは合致していない。

これらの社会機能は言うまでもなく田舎の大家族であれば、モノリシックな(一枚岩型の)家庭(や地域社会)で閉じていたものである。「富の未来」でトフラーはそうした家庭内で生産消費者によって創出される価値に目を向けよというメッセージを出しているが、非金銭経済に価値が見いだされにくい風潮が造成されつつある日本では、生産消費としての家庭の役割はむしろ解体される方向にある。

これはどちらのモデルが良いということではないが、個人の快を追及したり、高度な専門性を求めたり、効率化やスピードを進める中では、「モジュール化」し外部化する流れは不可避であるように思われる。例えば恋愛もまた不倫の容認化という形で家庭からある種「モジュール化」しつつある。家庭ということでは、女性の社会進出の進展と男性の雇用の不安定化や収入の低下によって、かつての企業戦士+専業主婦モデルが破綻しつつある中で、性格もルックスも、仕事も家事・育児も、といったパートナへの高望み傾向は依然として根強いものの、大多数の人にとってはほとんど非現実的であるため、全体としての社会の効率性ということでも、個人の生活の質の向上という意味でも、従来のインテグラルな、ある意味では「抱き合わせ型の」家庭モデルから、互いにカプセル化されブラックボックス化した「仕事担当」「遺伝子担当」「恋愛担当」などがそれぞれ得意分野によって分化し、モジュール単位での競争やシェアドサービス化が進んでいく可能性がある。

さて、製品や企業の「モジュール化」を進める上で必要なことは「製品・業務・システムインタフェース(プロトコルを含む)の標準化」である訳だが、それでは様々な社会機能が「モジュール化」される時代において、モジュールとモジュールを結び付ける上でキーになっているのは何になるのだろうか。それこそがカネとコミュニケーション能力である、と考えられる。カネとコミュニケーション能力が近年しきりに話題に上るのは、モジュール化された社会で、質の高いモジュールへの自由で選択肢の豊富なアクセスを確保し、潤滑に繋げていくのに必要なインタフェースでありプロトコル(あるいはメタインタフェースでありメタプロトコル)が、交換能力の高いこの2つだからではないだろうか。もちろん、実際の場面では、モジュールによってカネのみでOKな場合、コミュニケーション能力だけでOKな場合、両方必要な場合があるだろう。

田舎では都会ほどは貨幣経済が進んでいないがゆえに、同等の(しばしば必ずしも高いとは言えない)収入であっても田舎では裕福な暮らしができるという話があったが、都会では何をしてもコストがかかるため、「普通」の生活をするためのコストが高くなりやすい傾向がある。また、コミュニケーション能力はカネで解決できない、標準化が進んでいない部分であるほど特に活躍する(人間関係が固定的な田舎社会では都会でいうようなコミュニケーション能力は必ずしも必要ではないが、別種のコミュニケーション能力はやはり必要となる)。

例えば、結婚の動機を下げた一要因ともされる中食の普及、デパ地下や街の総菜屋で総菜を買ったりコンビニで弁当をを買って食事をすます、という流れは料理機能のモジュール化ということだが、この購入プロトコル(プロセス)はほぼ完全に標準化(マニュアル化)されており、コミュニケーション能力は不要である。一方、教育や医療、介護、育児、風俗といったサービスになるとインタフェース&プロトコルがやや複雑化し、サービス提供側もしくはサービス利用側にも一定のコミュニケーション能力が必要になってくる(「サービス化する社会」の一側面)。

「モジュール化」社会は必然的にモジュール間の競争を加速し流動性が高くなるが、それを統合していくマネジメントは複雑になり、ストレスフルでもある。本来人間がそうした過剰な流動性に適合しているのかはよく分からない。というよりも、一定の割合の人は、望んでいないようにも思われる。そういった意味で何度かゆり戻しは来るのだろうが、大きな流れとして社会の「モジュール化」は止められないものであろう。

【参考url】
[business] PRESIDENT Online 著者別・該当記事リスト 藤本隆宏
[business] アーキテクチャの比較優位に関する一考察

【参考書籍】

4492393706モジュール化―新しい産業アーキテクチャの本質
青木 昌彦 安藤 晴彦
東洋経済新報社 2002-02

by G-Tools
4062134527富の未来 上巻
A. トフラー H. トフラー 山岡 洋一
講談社 2006-06-08

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2006年08月05日

ニュースメモ(2006/07/30-2006/08/05)

News

【2006/08/05】
[society] インターネット利用者の生活時間
インターネットの利用時間が長い人は、自由時間が長く、TVも長時間観ている。ってま、ネットが広く普及したから長い人を見ればそうなんであって、TVの時間がネットになってる人もいるとは思いますが。

[society] 生活時間配分の変化(1976年~2001年)
睡眠を削って自由時間を増やしている。

[society] 子育て負担と経済格差~若年層の経済基盤の安定が少子化対策の鍵~ (pdf)
格差問題、若年雇用問題、少子化問題は繋がっている。

[society] 公務員数の国際比較に関する調査
だから公益法人が入ってないですって。

[society] フリーターの4人に1人は「結婚するつもりはない」 明治安田生命が若者の意識調査
元ネタは若年層の就労に関する意識調査。どこに着目するかですが、もともとは就業形態による意識や自己認識の違いがメイン。

[busienss] テレビのピエロ・亀田興毅~TBSが仕掛けたワイドショー化戦略と便乗するプロモートビジネス
読み応えあり。

[education] 自殺予防教育を本格化 文科省、月内にも研究会
中高年の方が深刻ですが、未来の可能性を考えるとってことですかね。
関連: [society] たった一つでもなく、冴えているとも言えないやり方

[partner style] 未婚女性1000人に聞いた結婚観 (pdf)
5歳刻みで節目。
参考: [book] 彼女はなぜ結婚できたのか 出会いの秘密がわかる結婚マーケティング

【2006/08/02】
[society] 待機児童問題と少子化
いや、「高コスト構造」って主なコストは人件費な訳ですよね。

[society] 60歳代前半への雇用延長動向
対応が進んでいる。

[society] NANO主婦
ニート主婦との違いは? なお、元ネタは
[society] 【ニュースリリース】 NANO(ナノ)主婦って何?
および
[society] 主婦ナビ6+1 (pdf)
を参照。他に「ラブママ主婦」「主婦キング」「パラダイ主婦」「セレキャリ主婦(セレブ主婦とキャリア主婦に二分される)」「チャリキャリ主婦」という分類があるらしいです。

[society] 長時間労働者比率の国際比較
日本が圧倒。まぁ、実感に合う。
関連: [society] 生活時間配分の各国比較

[society] 6割の企業でこの3年間に「心の病」が増加 ~コミュニケーションや助け合いが減った企業ほど顕著な増加傾向~
まぁ、実感に合う。

[society] NHKスペシャル「ワーキングプア 働いても働いても豊かになれない」
良いまとめ記事。

[society] ワーキングプアのNHK特集で取材された秋田県仙北町出身の友人と今日、昼飯を食いました
あの中では農家は別でしょうね。

[society] 「日本は社会主義国」でどこが悪い
[sociey] 資本社会主義と社会資本主義
[society] 種もみと糧もみ
「日本をどういう社会にするか」に絡む興味深い議論。

[society] 生活費数万円、突然の解雇予告 偽装請負のメーカー工場
[society] キヤノン、偽装請負一掃へ 数百人を正社員に
以前「フリーター漂流」で「弾」と表現されてた話に通じる。ただま、企業にとっての国内のメリットがなければ海外に流出しやすい部分でも。
関連: [society] 再チャレンジなる言葉の正体

[society] 編集機能、中国へ 日本の雑誌で動き盛ん 人件費安く日本語堪能
雑誌編集にもフラット化の波。

[society] 仕事への意欲が最低なのは日本人
最近日経でしきりにモチベーション(正確にはモラール)系の記事が出てるのと関係ある?

[society] 「働くこと」の再検討 能力向上と組織の活性化に向けて (pdf)
戦後の歴史と展望。

[partner style] はてなブックマーク > Cheese!Net - Cheese!9月号「夏の恋&H大特集・別冊付録」アンケートフォーム
ちなみにCheese!の読者層は、コミック誌データ考察 【 読者層 】 (4)少女コミック誌部門によると13-18歳とか。色々とギャップがあって笑える。

[subculture] 時をかける少女
なるほど、そう観ればいいのか。私も観ましたが今ひとつ感慨薄くて。(もちろん話がないゲド戦記よりははるかにまともでしたが。)

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