Back Numbers | Home

2008年09月26日

ニュースメモ(2008/09/21-2008/09/27)

News

【2008/09/26】
[society] 過剰就業(オーバー・エンプロイメント)―非自発的な働きすぎの構造、要因と対策
希望するよりも長時間働いていることをオーバー・エンプロイメントというらしいですが、日本でこれが多い3つの要因を指摘。これはとてもよくまとまってます。
関連: [society] 割増率の上昇は残業時間を減らすか? (pdf)
関連: [society] ワークシェアリングは雇用促進に有効だったか (pdf)

[society] 農協との決別なしに農業は復興しない
JAがガン?

[society] 高校・大学進学率の推移
今となっては意外な感じがしますが、現在社会で力を持っている50代の人たちは大学進学率が4人に1人程度なんですね。さすがに政官財の偉い人たちは大卒が多いでしょうが。

[society] はてなブックマーク > 高齢者は本当に弱者なのか? - Econviews-hatena ver.∞
年齢よりも所得や資産の高低を基準にした方が社会保障としては正しいというのはもっとも。あとは捕捉の問題でしょうか。年齢は分かりやすいので。

[society] はてなブックマーク > 法人減税しても社会に還元されず - リハ医の独白
法人税と社会保険料を合わせた企業の負担としては別に高くないという指摘は、森永卓郎氏もそんなこと書いていたような気がします。
関連: [society] 社会保険料の事業主負担部分は労働者に転嫁されているのか (pdf)

[business] いわゆるCS(顧客満足度)向上運動の真実 - ニューロサイエンスとマーケティングの間 - Being between Neuroscience and Marketing (anomyさん情報ありがとうございます)
いわゆるCSの向上は業績向上にほとんど役に立ってない…な、何だってー。CS経営って一体何だったのか、という感じですが、読むと要はやり方の問題で、現場の感情労働を底なしに飲み込む割には全方位的、八方美人的にやってるから、具体的にどう次の購買行動に繋げられているかが不明確ということですかね。

[business] はてなブックマーク > 晩産・晩婚の30代以上の女性「晩嬢」が日本経済を牽引する?|これが気になる!|ダイヤモンド・オンライン
また新語が。F1層がいつの時代でも重要だったのは、昔は恋人や夫の財布があって消費感度が高かったからでしょうが、加えて今は自分で稼いでる。
関連: [society] 女性のライフコースと資産形成~結婚?出産?そこが資産の分かれ道~ (pdf)

[business] はてなブックマーク > cpainvestor.com | 超長時間労働を厭わない組織風土をいかにして変えていくべきか
これはいいですね。アウトプット志向というか。短時間で同じ成果が出せるならもちろんそれに越したことはないです。ただ日本では、短時間でできるようになったら成果目標自体が釣り上げられる可能性はありますが。

[subculture] はてなブックマーク > 「オタクが高齢化した未来の秋葉原」 - アキバBlog
グループホームのアイデアは昔から言われてますね。老後はやはり不安ですから。いつまでも「学園モノ」なのかということでは、基本的に時間が止まってる(あと単に若い方が好きというのもあるか)訳だから、まーそうなるのではないかと。

【2008/09/22】
フェルメール展 光の天才画家とデルフトの巨匠たち」を観て来ましたが、「絵画芸術」の出品中止で目玉がなくなってしまった感。

[society] コンパクトシティ実現の鍵は7割の住民の動向にあり~ 中心市街地の必要性に関する意識調査 ~
商店街の活性化は期待されていない。

[society] 日本のTFP上昇率はなぜ回復したのか:『企業活動基本調査』に基づく実証分析
2000年代以降の企業の全要素生産性の向上は主にリストラによるもの。つまり、業務量・成果を減らさずに人を減らしている(のだから1人当たりの忙しさは上がっている)。

[society] はてなブックマーク > 現代の派遣奴隷制が若者を襲う~人格の否定、支配的な強制労働、暴力による労務管理|すくらむ
流動性の高さに加え、もしかしたら派遣の規制も関係してるのかも。つまり、事前面接ができないし、あくまで能力・経験ベースで依頼し、性別・年齢とか個人情報は不問(=総合的な「人」で採用できない)だから、個人には興味を持ちようがなくなる可能性。もっとも、だからといって事前面接を規制緩和したら別の面でもっと酷いことになる。直接雇用に転換するとしても、契約社員という概念が残っている以上は本質的な「流動性」や賃金ギャップは解消されにくい。

[society] はてなブックマーク > 教育後進国ニッポン いますぐ世論を変えなければいけない - Munchener Brucke
教育の機会平等を実現することは重要ですが、今、日本で何がボトルネックになっているかということを考えてみると、余りそれが教育という感じはしません。少なくとも高学歴はだぶついていて(起業するのであれば別ですが)、むしろ「せめて実直な精神」の方がしばしば求められている。企業のビジネスのやり方が、教育を生かせるようになっていないのかもしれません。

[business] はてなブックマーク > 大和総研/コラム:「階層序列意識」の排除とリーダーシップの品質向上
メンバの自律が前提で、単に階層をなくしてフラット化すればいいって訳ではないんですよね。1人の人が見られる(マネージできる)人数は限界があるから、自律してないと見切れなくなる。「中堅崩壊―ミドルマネジメント再生への提言」には、トヨタのポストフラット化の話が出てきますね。
参考: [business] ●組織としての力と、自立する個人の力を融合させているトヨタ(FIN) -社会全般に対する考察 オンリーワン見聞録

[mental] メンタルヘルスと経営 ~健康経営に向けて
なぜメンタルヘルス対策が上手く生かされていないのか。

Posted by seraph : 00:00 | Comments

2008年09月25日

期待値マネジメント―3つの戦略

Business | Partner Style | Society

店に行けば手にとって確かめられる、カネを出したらあらかじめどんなものが手に入るかがほぼ分かるモノ売りのビジネスと異なり、生産と消費が同時に行われる同時性を持つサービスビジネスにおいては、顧客の期待値を適正な水準に保つこと=「期待値マネジメント」が極めて重要である、ということを考えている。

顧客満足や顧客感動は、カネを払う前に持っていた期待値を、実際に提供した価値がどれだけ上回ることができたかで決まる(良い意味での裏切り、とか)。つまり、初期期待値がリソース上現実的に提供可能なレベルをはるかに超えて高ければ、提供側がどう頑張っても顧客を「がっかり」させてしまうことになる。医療、介護、教育、公共サービスといった領域で起きている「モンスター化」の一因は、この初期期待値の暴騰にもあると思われ、期待値の適正化がサービスマーケティング上ますます重要になってくると考えられる。一般のプロフェッショナルサービスでも同様であり、営業が無理な約束をしたために商談が成立した瞬間にすでに「敗北」(例えば、現場のデスマーチ、訴訟問題に発展)が決まってしまうことも少なくない。

ただ、単に期待値を下げればいいという訳でもない。他社との競争ということもあるし、例え競争が厳しくなくても、初期期待値が低ければ、そもそもお買い上げ頂けなくなってしまう。期待値が高過ぎても低過ぎてもいけない、適正な水準に保つことが必要であり、だから期待値「マネジメント」なのである。

この「期待値マネジメント」は必ずしもビジネスの場面だけでなく、個人の生活においても、就職(企業側から見れば採用)や恋愛・結婚といった、「契約」前には得られる情報が限定されており、分からないことが多いものでは似たような側面があり、初期期待値と現実の落差がしばしば契約を維持する上で問題になる。そこで、ここでは「顧客(広い意味での)」の期待値をどうすれば適正水準にしていくことができるか、3つの戦略を考えてみたい。

i)「正直者」戦略
1つ目はとにかく正直になる、という考え方である。インターネットの広がり、それも2.0時代(これが何なのかはともかく。例えば、「口コミ2.0 ~正直マーケティングのすすめ ~」が近い)を迎えて、消費者が製品・サービスの利用体験をアップロードすることが一般的になってきている。そうした中では、いくらマス広告やオフィシャルWebサイトでいいところばかりを宣伝しても、消費者は信用してくれない。そこで、欠点は欠点で正直に認めた上で、それでも魅力があることを分かって頂き、同じ目線の高さで顧客を巻き込んでいく、というやり方である。

この戦略は、もともとの「商品」が基本的には魅力的な場合に有効である。もともとの「商品」に問題があり過ぎる場合は、欠点を洗いざらい正直に説明すると、誰も買ってくれなくなってしまう。以前、はてな匿名ダイアリーで弱さをさらけ出した上でこんな自分で良ければ付き合って欲しい…みたいな話があったような気がするが、これではよほどイケメンでもない限り、初期期待値が下がり過ぎる。いわゆる「ブラック企業」の採用活動も同様であり、過酷な労働現場を説明する理由がない。

ii)「落としどころ」戦略
そこで2つ目の戦略として、初期期待値は下げない、とりあえず「契約」までは出来る限り魅力的に見せた上で、一旦「契約」してしまった後で、コスト・リソース上現実的な線に向けて「落としどころ」を探っていくというやり方が考えられる。というよりむしろ、コンペになる一般のプロフェッショナルサービスは、契約までは競合よりも魅力的に見せなければならないので、意識せずとも概ねこれをやっているのだろうが、いざ契約した上で着地点が見つからないとさっくりデスマることになる。

昔、「殴らぬオタクより殴るDQN」という比較になっていない比較がブログで語られたことがあったが、これも買ってみるまでどうせ分からないんだから、だったら外から見える初期期待値が高い方がいい、ということになる(ただ、この場合「落としどころ」がDV男/女は、共依存でもなければ嫌だろうが)。企業説明会で調子のいいことを言って落としどころが「ブラック企業」も、従業員にとってはたまらないが、労働市場の流動性の低さが障壁になって、残ってくれる可能性もある。

この戦略は、製品・サービスの利用体験が余り表には出ない場合に有効と考えられる(情報の非対称性を活用できるため)。プライベートの恋愛・結婚体験が相手の個人名を挙げてインターネットに公開されることは、余りないはずである(SNSが今後どうなるかは分からないが)。一方、「ブラック企業」は、データベース化が進んでいるため、次第に厳しくなるかもしれない。

iii)「世の中そんなもの」戦略
3つ目は、自分では弱み・欠点を説明しないが、マスメディア、アナリスト、学者先生、コメンテーター、その他第三者の「識者」を通じて、大体これぐらいの期待値が適正なんですよ、ということを語って貰い、顧客に認知して頂く、というやり方である。この方法は自分では弱み・欠点を説明することが難しい場合に特に有効である。医療や介護サービスにおける医療問題、介護問題をメディアで大いに取り上げ、現場の困難さに対する理解を広げることは、一定の効果が期待される(これを医者が患者に直接リソース上無理です、などと言うのは困難だろう)。

そういう視点でみると、「女性が結婚できない3つの理由(その1)」も、一見、これが日経WomanではなくてNBOnlineに載っているのは独身男性が溜飲を下げてアクセス数を稼ぐため?とも思ったが、ある種の期待値の「適正化」、例えば、男性の積極性・能動性が求められる恋愛市場に残っている人にリードを期待するな、ということを狙っていると考えれば分からなくもない。もっとも、男性から女性への家事・育児の期待値、女性から男性へのカネの期待値を下げるというのがより本質的だろうけれど。

Posted by seraph : 00:00 | Comments

2008年09月23日

ワークライフバランスが新手の「リストラ」になる

Business | Society

タイトルはやや釣り気味だが、メンタルヘルスの問題が従業員の生産性に影響し、仕事と家事育児の両立を支援することで、女性の継続的な雇用を広げることが必要になっている中で、ワークライフバランスは、マネジメント上の重要課題の1つになっている。一方で、ひとつやり方を間違えれば、ワークライフバランスの推進が本来の意図とは異なる結果に繋がってしまう可能性はないだろうか。

ワークライフバランスの実現のためには、労働時間(例えばフレックス制度)や、勤務場所(例えば自宅勤務制度)の自由度は実は余り効果がなく、単に絶対的な労働時間の問題であることが指摘されている(*1)。

(*1)『柔軟な働き方はワーク・ライフ・バランスを改善するのか』~働き方の柔軟性が高いほど、生活が充実している人が多くなるという関係はみられない~(pdf)など。

そこで総労働時間をどのように減らすかということになれば、企業は有給休暇の消化率をKPIにするのではなく、残業時間の削減をKPIにするはずである。企業にとって、残業時間を減らすことは即人件費の削減になりウェルカムだからだ(もともとサービス残業になっている企業は論外だが)。

問題はここからで、業務の(投下資本に対するというより実態としての)生産性が変わらないまま労働時間を短くすれば、普通は生み出す付加価値や売上の低下に繋がる。しかし、ワークライフバランスのために業績が下がります、ということを許容する経営者や株主はいないので、ここには矛盾がある。残業は減らします、でも仕事量は変わりません、は、2000年代以降の日本の生産性向上が、生み出す付加価値の増大というよりはむしろ、アウトプットを減らさずに、従業員を削減するリストラ、インプットの低減(人は減ります、でも総仕事量は変わらないので1人当たりの仕事量は増えます)によって実現されたという指摘(*2)と同じようなことになる。

(*2)日本のTFP上昇率はなぜ回復したのか:『企業活動基本調査』に基づく実証分析など。

従業員を増やすある種のワークシェアも1つの方法ではある(社会全体としては1つの形である)が、これはインプット(コスト)が増えてしまうので1企業にとっては意味がない。ビジネスモデル自体の見直しや、仕事のやり方の見直し(*3)なくして、単に残業時間だけを管理し、成果はこれまで以上に出して行かなければいけないとすれば、自宅に持ち帰る作業など、数値上見えない仕事が増え、ワークライフ"バランス"どころか、仕事と私生活の境がなくなるワークライフ"フュージョン"になりかねないのである。測定しやすい数値だけではなく、施策自体の"バランス"を取っていくことが必要ではないだろうか。

(*3)例えば、はてなブックマーク > “ホウレンソウ”は第二の“カロウシ”になるか/Joe's Laboで指摘されているように、日本の企業ではしばしば顧客に価値を提供するよりも、内部の偉い人向けの説明に多大な時間を割いている(もっとも、上の人は部下の責任を取らないといけないので、そうならざるを得ないのだが)。

Posted by seraph : 00:00 | Comments

2008年09月18日

ニュースメモ(2008/09/14-2008/09/20)

News

【2008/09/18】
[society] 社会課題の社会化を目指した広報戦略について ~最近の国民運動の成功例に学ぶ~
クールビズが「ソーシャルインサイト」ですか。ネーミングの良さはもちろんあるだろうけど、個人的には電気代を節約したい企業と、ネクタイしたくない男性のインセンティブにマッチした、という風に「誰が得するんだ」ベースで捉えますね。そういう風に生活者の課題を解決することで、社会的な課題を解決する領域・手法を見出し、ウケのいい名前をつけて普及させることをソーシャルマーケティングと言ってるならまぁそう。

[society] Don't be memo: [メモ]「ゲームは子供の社会性をはぐくむ」。米社会調査機関が報告書発表
人を狂わせるのは孤立。全くもって。

[society] あなたの会社が救済される方法 - 池田信夫 blog
[society] 信用というもの - 債券・株・為替 中年金融マン ぐっちーさんの金持ちまっしぐら
[society] 行動は自由で潰す時は不自由 リーマン破綻が示した投資銀行の「不都合な非対称性」|山崎元のマルチスコープ|ダイヤモンド・オンライン
皆さんも困りますよ?と世界経済を人質にするのは勘弁して欲しいというのはある。今回のは金融資本主義の転換点なのか、それとも米国の頭のいい人たちはフリーダムに歯止めをかけつつ金融産業を活性化するやり方を見出すのか。
関連: [society] 当面の金融市場動向について~市場は政府による“全ての救済”を待つ~ (pdf)

[society] はてなブックマーク > 痛いニュース(ノ∀`):「パソコンを見てもらっただけなのにお礼を要求されて困ってます」…Yahoo!知恵袋
これは確かにイラッと来る。要求する方も変ではあるけど。こういうのは素直にメーカのサポートに投げればいいのでは。無償で直してくれたら「お礼を要求されるのはおかしい」のだし、カネ取られたらその作業には価値がある。

[partner style] はてなブックマーク > 北方謙三は本当にソープ行った事があるの? - Yahoo!知恵袋
えーというか笑った。でも別に風俗行く事それ自体が目的ではなく、「何のため?」を考えれば、異性や恋愛への過剰な幻想をなくすこと、とか単にすっきりすること、とかが目的だとすれば、恋愛や結婚で困ってなければ説得力として問題ないんでしょうね。

【2008/09/17】
最近テキストエントリが増えてましたが、仕事の多忙化によりまたしばらく大人しくなる見込みです。

[society] 社会保障と幸福度の関係
経済発展の幸福度の影響が弱くなり、生き方の自由度や社会の寛容性が重要に。そういう意味では、誰のための経済発展? とか社会の「遊び」が小さくなってない? ってのが今の日本ですね。個人でみるとマズローってホント? ってのはあるけど、全体で見ると食うには困らなくなると…ってのは概ねそうかも。

[society] 次世代育成支援のための新たな制度体系の設計に向けた 基本的考え方概要 (pdf)
[society] 次世代育成支援をめぐる最近の動き
少子化対策で何をすべきかはもう分かってるはずで、今はどこもかしこもカネが必要なので、どういう社会にするからどういう再配分にするか、という意思決定こそが重要。

[society] はてなブックマーク > NHKスペシャル「兵士はどう戦わされてきたか」を見て - avril-aprilの日記
「兵士はどう戦わされてきたか」再放送で観ましたが、なかなか良かったですね。むしろ「戦争を繰り返さないこと」を主題にしてるのではないのでは、とも感じました。

[society] EU労働法政策雑記帳: 赤軍派議長@シルバー人材センター
[society] きょうも歩く: 9/15 元赤軍派議長が67にして労働者性に目覚める
齢67にして労働を知る。笑った。おまえは何を言っているんだ、の世界。

[society] はてなブックマーク > 極東ブログ: リーマン破綻、雑感
そりゃま儲かってる時は荒稼ぎ、危なくなったら金融不安を起こすから何でも税金で補填、じゃ他の産業から見ればずっこ過ぎる。にしても日本の一般企業のインパクトがまだよく見えないですね。

[society] はてなブックマーク > 脱・多重下請け構造へIT業界がすべきこと ビジネス-最新ニュース:IT-PLUS
てか雇用慣行は米国・英国がかなり特殊なので大陸系欧州を調査分析してくださいよ。

[business] 企業の「生産性」に関するアンケート調査
需要や原材料価格で「生産性」が変わってしまう、つまりビジネスプロセス全体で「生産性」が決まってる訳で、結局収益モデルの優秀さにかなり依存してしまう印象(もちろん、現場のオペレーションの優秀さもその重要な一部であるとしても)。

[business] 成果主義から精神的満足向上のマネジメントへー転換が求められるサービス業の人材マネジメントー (pdf)
「内発的動機付け」が重要。まーそうなんだけど、要はカネ払いたくない、にしか思えないんだよな。サービスビジネスの難易度の高まりや感情労働問題は、「顧客満足疲弊のデススパイラルは止められるか」でも書きました。
関連: [business] はてなブックマーク > 部下の「やる気」を引き出すフレームワーク - モチベーションは楽しさ創造から

[business] 顧客本位のサービスイノベーション実現のための科学的・工学的手法の導入
サービス工学ネタ。軽井沢の「最近話題のリゾート施設」…星野リゾートですかね。

[mental] 情報産業の管理職・人事担当者の方へ 「心の病の闇は深い」
最近「新型うつ」という言葉をしばしば見かけた気がしますが、「非定形うつ病」の対処方法はまだ分かっていない。

Posted by seraph : 00:00 | Comments

2008年09月15日

ロストジェネレーションと麻枝准の時代

Subculture

昨年、「永遠の現在」(2008/08/17)に寄稿させていただいた原稿です。1年以上前なので、今となっては古いというかどうかというところもあるでしょうが、そのまま転載します。ご笑覧ください。

---
ロストジェネレーションと麻枝准の時代 (初稿: 2008/06/29)

【社会現象としてのロストジェネレーション】
「ロストジェネレーション」は、今年(2007年)始めに朝日新聞によって、バブル崩壊後の「失われた10年」に就職を迎え、正社員になることが難しかった超就職氷河期世代(1972年頃~1982年頃生まれ、2007年現在25-35歳)を指す言葉として使われている。香山リカが「貧乏クジ世代」(*1)と呼んでいるのと同じであり、1900万人が該当するという。原義とニュアンスが違う(*2)とか高給取りである新聞記者からの上から目線がイヤだ(*3)とかいった話もあるが、伝えたいニュアンスは分からなくもない。

実際、「いざなぎ超え」とされるゆるやかな景気回復と、団塊世代の引退、少子化が重なり、都市部では労働力不足の中で、新卒が空前の売り手市場とも喧伝される一方で、ほんの数年前に就職を迎えてしまったがために正社員になることができなかったり、希望する仕事に就けなかった若者は少なくない。政府は「再チャレンジ」を政策として掲げているものの、肝心の採用する企業側が新卒を重視し、特に職歴のない転職者に厳しいため、既卒者の雇用が進んでいるとは言い難い。35歳を境として転職市場や派遣採用の門戸が急速に狭くなるため、10年後には、ロストジェネレーションの世代が社会にとって大きな負担になっている可能性は高い。

単に就職難であったということばかりでなく、この世代、特に男性はまた、「生き方」のロールモデルを見失い、とりわけ自信を失っている世代でもある。バブル崩壊後の不況によって、日本型終身雇用・年功序列が崩壊し、リストラの嵐が吹き荒れる中で、必死に会社にしがみつく父親の後ろ姿を見て育てば、父親をロールモデルにすることは困難であろう。また、女性の社会進出や恋愛観の変化によって、家庭や男女関係にも変化が訪れている。見合い結婚は7%台にまで落ち込み(*4)、恋愛からあぶれた人たちが救済されるチャンスは極めて限定的になっている。もちろん、結婚情報サービス会社で出会ったカップルを含めればこの比率は高まるかもしれないが、情報サービスで知り合った後は一般の恋愛プロセスを経るため、恋愛的な魅力が人生のパートナーを見つける上で重要になっているという意味では変わらない。十分な仕事に就けず、特定のステディなパートナーを持たない人が増える中で、非婚化が進むのは必然である。

【ロストジェネレーションの作家】
1975年生まれの麻枝准は氏自身がちょうどこのロストジェネレーションの世代に当てはまるということになるが、麻枝の読者もまた、その大半がロストジェネレーションに当てはまることになるだろう。しかも「道に迷った」という意味では、麻枝の読者は単に世代論を超えて特にこの言葉が適切かもしれない。そして麻枝准という作家は、このロストジェネレーションの時代にこそ生まれた存在ではないかと考えている。

その物語は作品を重ねるごとに少しずつ変化している。初期の『MOON.』『ONE』『Kanon』は、読者が感情移入する対象として主に(主人公でなく)ヒロインのトラウマや別れ・喪失を描く事で読者にカタルシスをもたらすことを最大の特徴としており、通常の映画・ドラマ・ゲームの物語であれば娯楽が娯楽として完結し、娯楽の時間が終われば気持ちを切り替えられるものが、しばしば日常生活にも影響を与えてしまうようなある種の圧倒的リアリティと深い共感を呼び起こす物語を一貫して創出してきた。麻枝の描くヒロインは恋愛ゲームキャラクタの記号的な特徴とともに、必ずと言って良い程生きる事そのものへの不器用さを持っており、自信を持てず人間関係にナイーブなロストジェネレーションの文学青年の心を捉えることに成功したのである。「きみもひとり 僕もひとり みんなが孤独でいるんだ この輪の中でもう気づかないうちに」(「Little Busters!」)に通じるような、恋人・友人と一緒にいてさえ「ひとり」を感じてしまう心性と言えるだろうか。

【2つの恋愛ゲームユーザ層】
さて、『ONE』で注目され『Kanon』で大ブレイクしたKeyはいわゆる「泣きゲー」のブームを生み出し、他のブランドからも似たコンセプトを狙った様々な作品が登場した訳だが、一方で、その後の恋愛ゲームの主流はKeyのそれとはかなり異なっている。

具体的には、「鬱ゲー」と呼ばれた『君が望む永遠』(2001年)を転機に、『D.C.~ダ・カーポ~』(2002年)を始めとするキャラクタ萌えゲー、それも性描写が1キャラクタで複数回登場する、「萌えエロゲー」が主流となり、2007年の今に至るまでそれが続くことになる。これは同じ土俵で競争するのを諦めたという事もあるかもしれないが、1つには、市場のニーズ自体が変化したのではないかと見ている。具体的には、異性に興味を持ち始める小学校高学年の頃から、すでに(『同級生』(1992年)、『ときめきメモリアル』(1994年)などを走りとする)恋愛ゲームというジャンルが確立していた、言わば「恋愛ゲームネイティブ」(*5)層が18歳となり、美少女ゲームの主要顧客層になったことがその理由ではないかという仮説である。

ロストジェネレーションの恋愛ゲームユーザは、異性に興味を持ち始める頃には、美少女ゲームこそ存在するにしてもまだ普及してはおらず、一般に、最初は普通の恋愛およびその挫折を通過してから恋愛ゲームに触れていると思われる。そのため、恋愛ゲームに対して、「現実の恋愛でなく恋愛ゲームをプレイしている」ことに幾分かは後ろめたさが存在していた。その点、麻枝のように、村上春樹の匂いを感じ、小説に近い深い読みと考察に耐えうる作品は、「自分はあくまでも物語として読んでいるのだ」といった「自分への言い訳」がしやすいことが「利点」だったのではないだろうか。今となっては懐かしい美少女ゲームユーザ内における「エロ派」「シナリオ派」の対立も、「シナリオ派」の「エロゲー」に対する落ち着かない感覚が恐らく根底にあった。それが行き着いたのが『CLANNAD』『Little Bustters!』の一般作化なのだろう。

しかし、新しく出てきた「恋愛ゲームネイティブ」層は、初めから、もしかすると恋愛以前に恋愛ゲームや萌えゲーに接しているため、ゲームのキャラクタに、性的なものを含む恋愛的な感情を抱く事についてより親和的であり、後ろめたさを比較的感じにくいと思われる。むしろ、モテ系であれば屈託なく現実の恋愛と、恋愛ゲームの萌えキャラを並列に楽しむことができるだろう。あるいは、全く逆に、子ども時代から恋愛ゲームにどっぷり浸かっているために、現実世界における恋愛への未練がない人すらいるかもしれない。「萌えエロ」の全盛は、こうした層が主要顧客層になったことでもたらされたものではないかと考えるのである。

【そして終わりなき日常が残される】
一方、『Kanon』に続く『AIR』では、生きることの不器用さが極限に行き着いた観鈴の過酷な運命、「そら」として傍観することしかできない諦念が印象的だが、そのラストでは、then-d氏の「私的AIR論 恋愛ゲームを遠く離れて」(2000年)で、そうした過酷な運命や諦念を物語の中で閉じるのではなく「プレーヤ自身にバトンを渡す」形を取っていることが指摘されている。

このような物語の終わりの後に示される暗示によって、我々は『AIR』の世界から離れて旅立つことになるのだが、そのとき我々はこれが残したものとともに、終わりのない道への第一歩を共に踏みだしているのだ、と考えられよう。そしてこの我々自身が歩みだしたという感覚は、この作品からバトンを渡された、という心境に例えられるであろう。

つまり、「次はあなたの番ですよ」ということになろうが、こうしたタイプの表現は『下級生』(1998年)のように同時期に一部見られるものの、萌えゲー全盛時代になってからは余り見かけないものである。更に、続く『CLANNAD』では主人公が父親になり、家族を持つ話が丁寧に語られるが、これもまた他の萌えゲー作品とは一線を画している。仕事、結婚、育児、そして家族と、それを通じた人間的成長といったテーマは、社会人経験が少し重ねられたユーザが増える中で、仕事でこそ『はるのあしおと』『SA・NA・RA・RA』『120円の春』など一部の作品で見られるもののの、結婚や育児を真正面から描こうとするものは稀である。結婚、育児といったイベントは、人が他人の人生に対して責任を負っていくものであり、しばしばそれを回避してきた読者にとっては、率直に言って目を逸らしたい話題ですらあるかもしれないからだ。

必ずしも血縁に依らない家族のあり方は麻枝が『Kanon』『AIR』の頃から繰り返し書いており、氏の家族観に通じるものであろうが、『CLANNAD』ではバッドエンド分岐においてよりはっきり分かるように、プレーヤをかなり意識した書き方をしている。

じゃあ、俺は…
大人になった俺も…家族なんて持たずに暮らしていくのだろうか。
その時の俺は、どんな俺なんだろう。
……。
ああ、思い描くだけで面倒だ。
どんな責任も負いたくない。
気楽なままで居続けたい。
ずっと、ひとりだったら、それもいい。

ここでは、ロストジェネレーション(特に1975年生まれの麻枝より上、『CLANNAD』が発売された2004年には29-32歳)であれば、年齢的に普通なら家族を持っていてもおかしくないプレーヤに対して、より踏み込んだ「バトン」を意識していると思われる。これはプレーヤを楽しませようという一般的な恋愛ゲームのマーケティング視点からでは考え難く、「鬱アニメ」として一部で有名な(*6)『耳をすませば』にも通じるものがあるし、ある意味ではより残酷ですらある。思春期の主人公たちの『耳をすませば』が、大人になってからはいくら鬱になろうともはやどうしようもないのに対して、『CLANNAD』が提起する、新たな家族を作って行くという話は、今まさにロストジェネレーションが直面し、そして今後も直面し続けるものであるからだ。

もちろん、ここでも「恋愛ゲームネイティブ」層は、『CLANNAD』をそれほど屈託なく楽しめるのかもしれない。多層的に楽しめることが、作品が名作たり得る条件であることは確かだが、作品が本来持つ強度を十分に味えるのは、どちらかといえば麻枝と同時代のプレーヤではないだろうか。麻枝は『Little Busters!』を最後に、シナリオから引退するとされている。新しい「恋愛ゲームネイティブ」層の登場の中で、麻枝准はその役割を終え、そしてロストジェネレーションには、ただ終わりなき日常が残されるのである。

_______________________
*1 「貧乏クジ世代―この時代に生まれて損をした!?」PHP研究所, 香山リカ, 2005。

*2 【海難記】 Wrecked on the Sea (http://d.hatena.ne.jp/solar/20070104#p1)。

*3 バリカタBlog (http://masabon.tea-nifty.com/barikata/2007/01/post_0437.html)。

*4 国立社会保障・人口問題研究所 第12回出生動向基本調査 (http://www.ipss.go.jp/ps-doukou/j/doukou12/doukou12.asp)。

*5 筆者造語。ネットやケータイを小さい頃から当たり前のように使いこなしている若者を指して「デジタルネイティブ」と呼ぶのを参考にした。

*6 描かれる日常的な恋愛のあまりのリアリティに、本来、学生生活はああいうものではなかったのか、それに比べて自分の青春は…と鬱になる一部の人たちが続出したとされる。ARTIFACT@ハテナ系 - 再び『耳をすませば』を観て自殺 (http://d.hatena.ne.jp/kanose/20051213/mimisuma)など。

Posted by seraph : 00:00 | Comments

2008年09月12日

東方にみるエコシステム・マーケティング

Business | Subculture

NHKでもとうとう取り上げられた(東方プロジェクトの創作者ZUN氏が『ザ☆ネットスター!』(NHK BS2)に出演!とか)東方がウケた理由は各所で指摘されていて、

[subculture] はてなブックマーク > 東方Projectはビックリマンの再来か - バレエイメージ研究所日誌

一言で言えば、本家の素材をもとにして3rdパーティが色々できるから、ということで、大体その通りだと思われるが、考えてみればこれは以前に「エコシステム・マーケティング」(*1)で書いたもののコンテンツビジネスにおける例と言えそうだ。

(*1)なお、この辺の話がしっかり書いてあるビジネス書としては「キーストーン戦略 イノベーションを持続させるビジネス・エコシステム (Harvard Business School Press)」があるが、値段と厚さの割にあまり目新しい話がないので、積極的にお勧めはしない。エンタープライズIT系の人であれば、MicrosoftやSAPを念頭におけば大体イメージが分かるはず。要は中核となる競争力のある製品をベースに、周囲の企業が儲かる仕組みになっているかどうかということ。

もっとも、後付けの分析は何とでも言える。たまたま外部ネットワークが活性化し上手くいった、というのではなく、意図的に外部ネットワークを構築することで、マーケティングコストを最適化し、自らも従来以上の利益を上げられるコンテンツを創ることができるようにしなければ意味がない。

そういった点で、商業・同人作品を含め、エコシステム・マーケティングが上手くいったもの(といってもやはり狙ったというよりは自発的に起きたという面が強い)として想起されるのは、「ONE/Kanon」や「ひぐらしのなく頃に」だが、こうした作品の共通的な特徴を抽出すれば、何らかの仮説、ベストプラクティスは得られるかもしれない。実際、作品の構成要素としてはかなり共通しているところがあることが分かる。

キャラクタ基本的な属性(萌え要素)を押さえ組み合わせつつも単なるテンプレに留まらない逸脱がある。キャラ絵は「個性的」。同人でより一般ウケする絵師が参加することで補完されやすい。ただしこれが必須条件であるかどうかは疑問も残る(例えば「アイマス」も外部ネットワークが活性化しているが、オフィシャルから普通に可愛い)。
音楽卓越しており、音楽から入る人も少なくない。キャラ絵と異なり、音楽はオリジナルが優れていれば優れている程アレンジ、マッシュアップが集まる。
シナリオ+テキスト or ゲームノベルゲーム系(「ONE/Kanon」「ひぐらしのなく頃に」)とゲーム的なゲーム(東方シリーズ)で異なるが、シナリオ+テキストかゲームのどちらかが卓越している。これでハマった人が初期の外部ネットワークを構成する。ただし、シナリオは一定の世界観を確立しつつも、オリジナル作品で完結しておらず、物語には補完の余地が残されている。
エロオフィシャルにはないかもしくはきわめて貧弱。同人で補完されやすい(東方は何故かそれほど活発でないが)。オフィシャルでエロ要素が充実していると、恐らくキャラクタの消費が早くなる。

加えて、東方がより外部ネットワークを広げやすいのは、やはりオリジナルの作者が2次創作に極めて寛容なスタンスを取っていることで、同人で稼ごうとする人も集まるし、ユーザに広く人気があるから、ニコ動やpixivで成り上がろうというクリエイターが好んで題材として使うことになり、ますます認知が広がるという好循環が生まれている(自分が最初に知ったのもニコ動だ)。

ただこの2次創作自由にOKというスタンスは商業では辛い。角川はYouTubeにアップされたファン動画のチェック・公式認定化などで、商業でどこまでできるかを探っているようであり、既存の著作権の方にビジネス上の制約を生み出してしまっている可能性に真っ先に気づいていると思われる。

従来の発想からすれば、いわゆるメディアミックスで、オフィシャルで何でも提供し、1つのコンテンツから収益を最大限に搾り取ろうとするのが普通の考え方だが、創作に使えるツールが低価格し、トフラーが言うところのプロシューマ(生産消費者)が増える中で、東方などのように、ユーザが参加できる「遊び」を残すことで、外部ネットワークを巻き込んで全体としてビジネスを拡大するという考え方が商業でも優位に立つ可能性は多いにある。

それでは、東方に全く死角はないか。1点気になるとすれば、外部ネットワークによって初期(ユーザが増加したWindows版の)のキャラクタに圧倒的な厚みが生まれているため、新作で登場したキャラクタの存在感が薄くなってきていないか、ということだろうか。

Posted by seraph : 00:00 | Comments

ニュースメモ(2008/09/07-2008/09/13)

News

【2008/09/12】
[society] 「成長促進的」な税制改革の実現を (pdf)
成長率を高めなければ、例え景気が回復したとしても、また「実感なき景気回復」に戻るだけ。

[society] 甘くない世の中で強いのはどっち!? 「自分を愛する女」「モテたい男」――「本能」が生んだ自己愛のしくみ
Diamond Onlineにスイーツ(笑)登場笑った。でもNRIの調査では30-40代女性に雑誌が効くんじゃなかったでしたっけ。

[business] メンタルヘルスの放置は経営怠慢だ (pdf)
絶対的な長時間労働は論外ですが、労働時間もやはり衛生要因であり、それだけではダメ。
関連: [business] 人材を活かす「モチベーションマネジメント経営」

[partner style] はてなブックマーク > チラシの裏:結婚相談所を使う奴やお見合い結婚をする奴は負け組? - syncのれんあい☆にっき ver1.2
なるほど、きっかけの違いだけで後は同じだから、今は恋愛結婚より見合い結婚の方がハードルが高い、か。厳しい。

【2008/09/11】
[society] 労働と設備への適正な付加価値分配~法人税引下げが経済成長につながる前提条件~
法人税を引き上げても適切な利益の分配がされなければ経済成長には繋がらない。

[society] 自民党総裁選の対立軸を整理~経験主義の財政再建派と合理主義の上げ潮派~ (pdf)
あちこちで行われている整理の1つ。っても自分たちで選べる訳じゃないしな。

[society] clast » ビール人気が暗示する“今”
ビール不調のこういう視点の分析は新鮮。

[society] はてなブックマーク > 消費しない20代が日本を滅ぼす!?|竹中平蔵・上田晋也のニッポンの作り方|ダイヤモンド・オンライン
現象の指摘自体は先日の「持たない人生」にも通じるけど、書き方が何か酷い。「持たない」というのは決定を先延ばしにすることで選択肢の幅を広い状態にしておく(金融資産のままにしておく方が交換性が高いから)、という意味もあるんですよね。

[society] はてなブックマーク > 派遣会社の「名ばかり正社員」 悪労働環境に苦しむ特定派遣が急増中|News&Analysis|ダイヤモンド・オンライン
仕事を選べないから常用・特定派遣であればいいというものでもない、ということですか。

[society] はてなブックマーク > 痛いニュース(ノ∀`):「殺しに行く!」 結婚相談所に乱入して警官に撃たれた男、フェンシング剣やグルカナイフなど刃物十数本装備していた
うわ、動機が容易に想像できるだけに。

【2008/09/09】
長期休暇を頂いてましたが再開です。

[society] 「生産性向上」必ずしも善ならず-「リストラ型」は成長難しく
タイトルが全てですが、非正規雇用化による「生産性向上」では経済全体は豊かにならない。っても1企業から見れば知ったことかというところ。そもそもボトルネックは需要にあると思われるので、単に生産を増やしても意味はなく(ってもサービス業は同時性があるから需要がそのまま現れるか)、市場を海外に求めるか、需要を引き出すような商品・サービスに変えていくか。
関連: [society] ミクロ・データによる生産性分析の研究動向―参入・退出、経済のグローバリゼーション・イノベーション・制度改革の影響を中心に

[society] 人口減少問題という宿題~すでに人口はピークアウト、生産年齢人口初のマイナスも間近~ (pdf)
労働力の減少よりも需要の減少のインパクトが大きい。そりゃそうだ。サービス業を中心に内需型産業がどう海外に出て行くか。

[society] 『柔軟な働き方はワーク・ライフ・バランスを改善するのか』~働き方の柔軟性が高いほど、生活が充実している人が多くなるという関係はみられない~ (pdf)
業務内容・勤務時間・勤務場所の柔軟性が高まっても、生活が充実する訳ではない。WLBは柔軟性ではなく、単に総労働時間の問題ってのは他のレポートでもあったような。

[society] はてなブックマーク > おこぼれ理論のどうしようもない胡散臭さ - 模型とキャラ弁の日記
高度経済成長期のように全体が大きく成長しているときで、かつ長期に見れば間違いなく皆豊かになっていてトリクルダウンもありそうですが、成長率が小さくなると先の「景気回復」みたいな感じになるでしょうね。

[society] はてなブックマーク > EU労働法政策雑記帳: 社会保障重視派こそが一番の成長重視派に決まってるだろう
人口ボーナス消えて低負担中福祉から低負担低福祉になってますからね。財源は何でもいいって消費税が一番現実的だと思うけど、消費低迷リスクとのバランスをどうするか。高福祉の国はどうして上手く回ってるんだろう。
関連: [society] はてなブックマーク > 稼働率も税収も関係ない、しかし。 - モジモジ君の日記。みたいな。

[society] はてなブックマーク > 雨宮処凛・萱野稔人『「生きづらさ」について』
「生きづらさ」は若年層の感覚を一言で言い表そうとするした時にしっくりくる言葉。

[society] ゆるやかにつながる「インビジブル・ファミリー」 (pdf)
NRIが少し前から言ってる「インビジブル・ファミリー」(2世代で同居はしないけど介護や育児支援で近居する家族)の紹介。
関連: [society] 『子育て世代のワーク・ライフ・バランスと“祖父母力”』~9割の祖父母が、孫がいることにはりあいや生きがいを感じている~ (pdf)

[business] はてなブックマーク > サラリーマンはカネでは動かない:アルファルファモザイク
元レポートは「30代で広がるモチベーション格差-自律的人材が組織の持続的成長の鍵-」(pdf)。カネは衛生要因だから多少上げてもモチベーション向上に繋がらないけど、下げればモチベーション下がる。元レポートでも「退職意向理由、退職理由ともにトップは給料の問題」って言ってますね。

[business] はてなブックマーク > 若者がモノを買わない理由--インターネット依存、低い上昇志向・・・:マーケティング - CNET Japan
[business] はてなブックマーク > 痛いニュース(ノ∀`):若者がモノを買わない理由-「インターネット依存」、「低い上昇志向」
書き方が嫌らしいためか反発が大きいですが、仮説なんだから別にいいんじゃない(要は自分たちが使えるかどうか)と思うけど。

Posted by seraph : 00:00 | Comments

2008年09月11日

「婚活」ブーム、ホント?

Partner Style | Society

社会学系のネーミングセンスに長けた山田昌弘氏が名づけた「婚活」だが、本当にブーム、なのだろうか。J-CASTニュースのコメント欄には男性と思われる怨嗟の声が怒涛のように連なっており少々引くが、「あなたの魅力のせいじゃない!――恋の悩みNo.1「出会いがない」を解決!」を見ると、これは要は結婚情報サービス会社のマーケティングじゃないの、とも思わせられる。

確かに、少子化で若年層が減少する中で、人数的にボリュームのある30歳代を後押しすることは、結婚市場への参加者を増やすことに繋がり、ビジネス上も、少子化対策という点でも有効であろうとは思われる。ただ、それが最適な打ち手なのかどうかはよく分からない。施策の妥当性はその目的、「何のため?」を一旦上に上がって考えた上で、その目的を達成するための他の手段はないか、を考えて、その上で、各手段の投資対効果を考えてみれば良い(下図)。


図 "婚活"ブームの目的-手段マップ(クリックで拡大)

ビジネス面から見れば、「婚活」ブームは、著者たちの印税収入や知名度向上を別にすれば、結婚市場への参加者増が目的であり、更にその目的は結婚情報サービスの利用者増であり、更にその目的は結婚情報サービスビジネス自体の維持・拡大である。ではこれは利用者増によってしか実現できないかといえば、(一般には)利用者が増えなくても単価を上げることでもでき、そのためには例えば出会いイベント自体を高付加価値化する、という仮説が考えられる。もちろん、アラサー・アラフォーでなく、中高年層の再婚を積極的にサポートすることで利用者を増やすなど、他の方法もいくらでもあるはずである。

一方、日本という社会の面から見れば、結婚者数の増加が目的であり、更にその目的は少子化解消であるから、それは既婚者の子どもを増やす、ということでも実現される。いずれにしても、方法は色々とあり、それらの投資対効果を比較して、より有利な手段を選ぶことが必要、ということになる。

そしてこれはもちろん、個人でも当てはまる。実際、可視化していないだけで、恋愛・結婚もしくは「婚活」の投資対効果が低いであろうと思っている人は、恐らく意識的・無意識的に、その上位目的を達成するための、別の手段を選んでいるのである(*1)。

(*1)ただし、ある特定の人と人生を共にしたいということ自体が最上位の目的である場合には、代替手段はないが。

今起きていることは、「婚活」でも指摘されている、経済面や社会・世間体面の圧力の低下から、妥協してまでも無理に結婚しなくてもいいという認識が浸透していることであり、それゆえに、相手に求める条件(*2)を下げることは基本的にしない。国立社会保障・人口問題研究所の調査で「半数以上が適当な相手にめぐり会わない」を挙げているのも、恐らく機会(出会いがない)だけの問題ではないのではないだろうか。

(*2)なお、先の日経WOMANの記事でもそうであるように、山田氏はしばしば年収の問題を挙げているが、身の回りで3.5%の人が大量にあぶれていることを考えると、経済力よりも「ルックスが良く、コミュニケーション能力が高い」(WLBがとれていて家事育児支援ができる、も)方が優先と思われる。

むしろ、本来(様々な要因で)結婚に向いていない人までもが経済的な理由や社会的圧力から結婚していた時代に比べれば、「適正」な水準に向かっている(向いている人の割合自体は多分昔から変わっていないのではないか。要求水準が上がっていることはあるかもしれないが)ということであり、ライフスタイルの多様化という点で、はるかに良い時代になっているのだと思う。

Posted by seraph : 00:00 | Comments

2008年09月09日

顧客満足疲弊のデススパイラルは止められるか

Business | Society

製品・サービスが成熟し、機能による差別化が困難になる中で、デザインやサービスの体験といった機能価値から体験価値による差別化を狙うことはごく普通になりつつある。中でも顧客満足、顧客満足を超える顧客感動を追求します、はどの企業も言ってることであり、単に言葉上の「顧客満足」「顧客感動」にはもはや差別化する余地は小さい。しかし、やらなければ競争に負けかねない。

一方で、こうした過剰な顧客満足の追求が、顧客満足主義に慣れ増長したモンスター顧客化の時代の中では、現場の労働者の感情労働(=高度な感情コントロールや期待される感情の提供を求められる労働)の度合いを高め、サービス残業を増やし、現場の疲弊を招いている可能性がある。

長時間低賃金で客や会社や社会の悪口を言わず顧客満足主義で働くことに同意しなければ「非国民」と判断される。
この戦前の「非国民」という概念は21世紀の現在でもまったく生きていますし、普段サラリーマンとして客や上司の理不尽な要求を呑んでいる人が消費者として振舞うときに 「この俺様が(長時間低賃金で客や会社や社会の悪口を言わず顧客満足主義で働くことに同意しているのに)この店員のやる気のない態度は何だ」とクレーマー(クソ客)に変身するのは目に見えている。
Don't be memo: 「働いたら負け」って言ったら、精神疾患とみなされるのか、このクソ社会が!

一般に、こうした過剰な顧客満足要求には2タイプがあると思われる。1つは客側にコスト意識がなく、どんなサービスを付加するにも本来はコストがかかるはずだが、それに対する感覚が弱いために際限のない要求をしてしまう場合であり、もう1つは客側にコスト意識がある(カネがかかることは理解している)が、カネを払いたくないか、もしくは払えないために、提供側の「誠意」を求めようとする場合である。いずれにしろ、過度な要求はタチが悪い。その点で、socioarcが普段フォローしている、コミュニケーション問題、メンタルヘルス、サービス生産性はそうした意味で全て繋がっている。はたして、こうした顧客満足疲弊のデススパイラル(下図)は止められるのだろうか。

顧客満足疲弊のデススパイラル
図 顧客満足疲弊のデススパイラル(クリックで拡大)

基本的に、経営者が率先して顧客満足主義を取り下げるモチベーションはない。これは、昨年まで、輸出型の超大企業を中心に、史上最長の景気回復を実現している中でも、労働者に還元する動きが起きなかったのと似ている。内需が拡大しないのは労働者への分配率が下がっているからではないか、内需が拡大しないから8割の内需中心企業はいつまでたっても景気回復の恩恵に与れない負のスパイラルに陥っているという指摘はしばしばされたが、自社が率先して賃金を上げる意味はなく、どこかもっと儲かっている企業が払ってくれないものか、と期待しているだけだった。顧客満足の問題においても、中小企業を別にすれば、経営者が直接顧客対応をすることは少ないから、わざわざ競合他社より顧客サービスの低下を招きかねないことはしない。

逆に、行き過ぎた顧客満足主義は、むしろ普通の顧客の満足度を下げ、現場を疲弊させ、むしろ良質な顧客への顧客サービスを低下させ、会社を傾かせるというリスクがあることがはっきりしてくれば、経営者としても、顧客期待のマネジメントを意識しなければいけないということになる。良いのか悪いのかは分からないが、モンスター顧客の増加が、そうしたきっかけになる可能性はある。

本来、クレームによって、顧客視点から、製品やサービスの改善点を見つけられたり、適切な対応をすることでむしろファンになってくれるということから、企業にとって「クレームは宝」(*1)であるはずだった。だが、これはあくまでも顧客にその企業により良くなって欲しい、という期待があるから、ということが前提であり、単にゴネ得で金銭的・物的に得をしてやろうという顧客や、もっと始末が悪く、ストレスの捌け口として店員に当たる、客という優位な立場で嫌がらせをして心理的優位感を得たい、といった顧客からは、企業にとって改善点を見出すのは困難である。一時期顧客満足とともに出た「クレームは宝」系の書籍から、悪質クレーマー対策系の書籍へという潮目の変化にも、そうした萌芽は見えつつあるように思われる。

(*1)現場を納得させモチベーションを高めるための言い方かもしれないが。

456969926Xプロ法律家のクレーマー対応術 (PHP新書 522)
横山 雅文
PHP研究所 2008-05-16

by G-Tools
4344007255クレーム処理のプロが教える断る技術
援川 聡
幻冬舎 2004-12

by G-Tools
Posted by seraph : 00:00 | Comments